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フリーランスは、なぜプロレスラー「鈴木みのる」を目指すべきなのか

 そのためには自分が輝くために必要な武器を持つ必要がある。

 もちろん鈴木も普段から体を鍛えて自らの武器を磨いている。プロレスラーといえば、ジムでウエイトトレーニングをするのが主流だ。しかし鈴木はウエイトをせず、自重と格闘技ジムでスパーリングのトレーニングに数年前から切り替えたという。自分に必要なのは実践の動きであり、筋肥大ではないと気づいたからだ。自分の武器を磨き上げるために、必要なことを見極めるのはフリーランスとして必要な要素だといえる。

 その鈴木みのるにフリーランスとしての在り方を教えてくれたレスラーがいる。今年の2月21日NOAH東京ドーム大会で、武藤敬司と共に引退をするNOSAWA論外だ。NOSAWAは、鈴木が全日本プロレスに参戦を始めた頃にチームを組んできた仲間の一人。当時は一緒に食事もしたりしていたそうだ。その時に言われたのが「勝っても負けてもこれ(ギャラ)一緒ですから」だという。NOSAWAははっきり言って強いプロレスラーではない。自分でも「弱いっすよ」と平気で言ってしまうほどだ。それでもあちこちの団体からお呼びがかかる。

 何せNOSAWA論外20周年記念興業には、ドリーファンクJr、ミルマスカラス、藤原喜明などプロレスファン以外でも名前を知っているレスラーが勢ぞろいした。それがNOSAWAのやってきた証と言える。そのNOSAWAが鈴木に「何もしなければゼロ円。でもやればいくらかは銭が入ってくる」と言っていたそうだ。

 それから鈴木はギャラが出るならどんな興行にも出場するようになった。メジャーと呼ばれる新日本プロレスや全日本プロレス、NOAH以外に地方の村おこしプロレス、海外の名前を聞いたことがないインディーズにも出るようになった。その試合でも手を抜かずに全力でファイトをする。それが鈴木みのるというプロレスラーだ。

 「昔はあの人はここまでやったけど、俺はそれ以上できるという気持ちを持っていた。でもいまは自分がいくら持って帰れるかが全て。それが自分の価値だと思っている。そこだけですよ。『金はいらないから、どこどこのリングに上がりたい』なんて気持ちはサラサラない。金をくれないなら絶対にいかない。くれるなら、たとえ観客が10人であっても俺はやる。テレビのタイトルマッチと同じ試合をそこでやる。全力で、そこにいるお客さんを満足させることだけです」(風になった男が感じた 「俺の国」アメリカより引用)

 どんな仕事でもギャラをもらった以上全力でやる。これを続けているからこそ、いつまでも出場のオファーが来る。2021年と2022年は、コロナ禍で海外への出国制限がかかっていたにも関わらずアメリカ、イギリス、カナダなどの海外からのオファーを受けて一か月以上ツアーを回っていた。そこで意識していたのはもちろんいい試合をすること。

 「最低ラインが100点でないとダメ」「100点満点で初めてお金がもらえる。さらにプラスアルファを見せると、次がある。それを繰り返す」(風になった男が感じた 「俺の国」アメリカより引用)

 まさにフリーランスとして生きていくために覚えておきたい言葉だ。誰もが常に仕事がやってくるフリーランスではない。だからこそどんな仕事でも引き受けて、全力で取り組み、プラスアルファを見せる。これを積み重ねていくことでフリーランスとしての実績になる。実績ができれば新しいオファーも舞い込むし、自分で売り込みにいく時も実績のお陰で決まりやすくなる。

 現在進行形でフリーランスの理想を実現している鈴木みのるは、これからもフリーライターである筆者の「推し」であるだろう。

 

文:篁五郎

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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